「1on1」と「個人の内面を捉えるサーベイ」をセットで導入。
人事と現場がタッグを組み、組織で人を育てる風土を醸成
背景・課題
現場マネジャーもメンバー育成の悩みをかかえている
永瀬:当社、シープランニングは、大手企業の総務・人事・情報システムなどバックオフィス業務全般をアウトソーシングで請け負っています。もともとは、ネットワークの構築業務で創業しましたが、顧客からの要望に合わせて柔軟に対応してきた実績から口コミで取引先を広げ、現在は約90名の従業員を抱えるまでに成長しました。
組織が大きくなり、プレイングマネジャーの増加、世代間のギャップなどを背景にピープルマネジメントがこれまで以上に難しくなっています。しかも、現場でのピープルマネジメントは、人事から状況が見えづらい。少しコンディションの良くないメンバーがいても、あと半年だけ頑張ってくれ、を繰り返してしまう可能性があります。そうしているうちにメンバーのモチベーションが下がり、活躍できなくなれば、お客様に価値を提供できなくなってしまいます。目の前の業績だけでなく、同時に中長期で人を育成し組織力を高めていくというバランスが必要です。
太田:現場でのメンバー育成の責任を、マネジャーに押し付けるだけではいけません。それは、マネジャーを信頼していないということではなく、ピープルマネジメントは組織全体で行うべきものだという考えからです。
現場のマネジャーもピープルマネジメントに対しては、悩みを抱えていました。自分自身は、背中を見て学べ、という環境のなかで歯を食いしばって取り組んできたマネジャーもいます。メンバーの声を傾聴し、支援するようなマネジメントが求められると頭では理解していても、昨今はハラスメントなどに対する意識も高まった分、どうメンバーと関わればいいのか、分からなくなってしまっているのかもしれません。
人事としては、現場のピープルマネジメントがうまく回るように、受け身ではなく積極的に支援していくことが必要だと考えました。
検討プロセス・実行施策
対話の機会がすれ違いを解消する
太田:現場での人間関係について、マネジャーとメンバーからそれぞれ話を聞くことがあります。そこで感じるのは、ほとんどのトラブルやすれ違いは、実はお互いが相手の意見にしっかりと耳を傾ければ解決する、ということです。これは第三者であるからこそ客観視が可能となり、理解することができたのかもしれません。私自身も、自分が上司の立場でメンバーと接しているときには、どうしても身構えてしまうことがあります。
こうした実際の経験と課題感で施策を検討していたところ、新入社員向けの研修をお願いしているリクルートマネジメントソリューションズのトレーナーの方からアドバイスをいただき、ピープルマネジメントの主軸として、現場マネジャーとメンバーの対話によって信頼関係を築く1on1(「よもやま」と呼称)を取り入れました。
永瀬:以前から、仕組みがなくともメンバーと信頼関係を築くマネジャーももちろんいました。しかし、どんなマネジャーや組織でも、安全で信頼性のある職場を作るためには、全社的な取り組みとして、対話の場を高頻度で設定することが有効だと思います。
太田:ただ、いたずらに仕組みだけを導入しても、よほど対話に慣れていない限りは、1on1の場をうまく活用できず形だけの施策となってしまう懸念があります。そこで、メンバー一人ひとりのメンタリティが分かり、かつマネジャーの具体的な行動を補助できるようなサーベイの同時導入の検討を始めました。
はじめは、パルスサーベイの導入を検討しましたが、あまり活用できるイメージがわきませんでした。短くストレートな設問で頻度高く実施できるため、メンバーが自身の今の状況を把握することはできると思いますが、マネジメントや対話を補助するツールとしては物足りなさを感じました。
また、組織診断系のサーベイも検討の1つには入りましたが、あぶりだされる課題は、現場のコミュニケーション課題に限らず多岐にわたることになります。
今回の施策は現場の関係性に焦点を合わせていたため、こちらは職場づくりが軌道に乗ってきたあとの段階と考え、見送りました。
INSIDESはそういったなかで、当社が求めているイメージにもっとも近いものでした。5分程度のアンケートは、3カ月前後の期間で収集するにはちょうどよい設問数であり、また、5段階の直観的に分かりやすい表現でメンバーの心理コンディションを把握できる。その上、SPI3をベースにした性格タイプと、それぞれの性格に合った対話方法が提示される。メンバーが自身のメンタリティを把握するために、またマネジャーが具体的な行動を取るために必要なツールは、これだと思いました。
成果・今後の取り組み
INSIDESを活用した1on1が定着しはじめた
太田:「メンバーの状態を見ることになかなか意識を向けられなかったマネジャー」にとって、INSIDESは意味のある仕組みとなっています。
診断結果が分かりやすいので、受け止めやすいのでしょう。まだまだ始めたばかりですが、INSIDESをうまく活用した1on1がマネジャーとメンバーのコミュニケーションの場として定着しつつあります。
永瀬:「窮々(※INSIDESの5段階のなかで、もっとも悪いコンディション)」のメンバーには、私が直接面談をしてフォローしています。以前は、アラートをキャッチできず、見逃してしまっていることもありましたが、今では、INSIDESの結果を受け、タイミングを逃さずフォローすることができるようになってきました。
以前は、人事が直接メンバーに声をかけるという機会はそう多くありませんでした。珍しい分、メンバーからすると「人事から声がかかった」と変に構えてしまうのではないか、またマネジャーにとっても、警戒心を持つ人がいるのではないか、という恐れはありました。
ですが、実際、「〇〇さんのコンディションが良くないようですね。まずは人事からアプローチしてみますね」と現場マネジャーに伝えると安心されるケースもあります。人事がフォローできるところはフォローし、マネジャーと連携しながら一人ひとりのメンバーの活躍を支援する風土がもっと広がっていくといいなと思っています。
実際に使用してみると、サポートが手厚く、本当に助かっています。私も複数回のINSIDESの結果の分析に関して相談に乗ってもらったり、結果の読み取り方を丁寧に教えてもらったりとさまざまなサポートを受けました。人事サーベイとマネジメント理論の両方に関して、プロフェッショナルな知識を持った方にフォローしてもらえるのは、大変ありがたいです。
また、INSIDES導入企業のマネジャーは、企業横断でINSIDESに関する交流イベントに参加できる点は非常に心強いです。当社のマネジャーも参加していますが、ピープルマネジメントについてはなかなか実践的に学ぶ機会が少なく、他の企業のマネジャーと交流しながら考えを深めていける場は貴重なものだと思います。
太田:ゆくゆくは、他部署のマネジャーと1on1を行う「ななめよもやま」が数多く実施されるような職場を目指していきたいと思っています。人はどうしても自分のフィルターを通してしか、人や物事を認識できません。だからこそ、いろんな人と話してそのなかから自分なりの考えをまとめていくことが必要だと思います。
その先に、従業員一人ひとりがいきいきと働く職場環境ができ、メンバー一人ひとりが自立し、自走する実力を身に付け、発揮していく組織が見えてくるのではないかと考えています。
企業紹介
株式会社シープランニング
「オフィス環境」「IT環境」「財務環境」から成るファシリティ(働く環境)におけるコンサルティング会社。ITサイドと総務サイドを相互にリンクして効率化を図る。ただ提案をするだけではなく、クライアント先に常駐し引越しの手伝いからレイアウト変更、PCの設置等、上流工程から下流工程までの実作業をきっちりとフォローできる体制を整えている。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。