導入事例

INSIDESで新人のコンディションを「見える化」し、現場のマネジメントを支援
上司と部下の有意義な対話を生む「定点観測」の仕組み

パナソニック株式会社様

リクルート&キャリアクリエイトセンター
企画部 戦略企画課
課長 坂本 崇 様
志鶴 友香 様

(2021.09.06取材時)

  • 組織開発
  • 定着率向上
  • 新入社員・メンター
  • 管理職育成

背景・課題

「ものをつくる前に、人をつくる」という松下精神を体現したい

坂本様

坂本:当社のリクルート&キャリアクリエイトセンターは、パナソニックグループの各カンパニー・事業部の人事と連携し、採用だけにとどまらず、その後のキャリアもフォローする部門です。我々はそのなかにある企画部で、ピープルアナリティクスの取り組みを進めています。

もともと私は学生時代に機械工学を専攻しており、生産技術者としてキャリアをスタートしました。技術者としてさまざまな経験をしましたが、最初は目をキラキラさせていた若手社員が、仕事やキャリアにおけるさまざまな壁にぶつかり、悩み、苦しむ姿をたくさん見てきました。

「ものをつくる前に、人をつくる」という創業者の言葉がありますが、次第に「どのようにすれば今の時代に合わせて、人をつくることができるのだろうか?」と課題感をもつように。身の回りの若手の相談相手になったりしていたものの、若手社員の定着・活躍の課題に仕組みから携わってみたいという想いが強くなり、社内公募制度を利用して人事部門に異動しました。私自身はこの会社が大好きで入社しましたし、その気持ちは今も変わりません。だからこそ、この会社に入った人には、イキイキと働き続けてほしいと願っています。

キャリア焦燥感を抱く若手が増加している

志鶴様

志鶴:私は2019年に入社し、現在の部門に配属されました。新人や若手のモチベーションが揺らぎがちであることは、私自身も悩んだ経験があるのでよく分かります。同期と話をしてみると、やはり入社前と入社後のギャップは多かれ少なかれありますし、前向きな話以外は上司と本音で話しづらいという悩みもあるようです。

これは私の実感でもありますが、SNSなどで活躍する若手の情報に触れていると、「自分は成長できていないんじゃないか」と焦燥感を抱く若手も少なくありません。「ベンチャー企業で頑張っている同級生が記事に出ている」「転職したらしい」など、情報が自然に入ってくるため、キャリアについて考えざるを得ない状況なのだと思います。

私もパナソニックという会社が大好きです。一方で、私を含めた新人・若手は、会社に対する愛情と共に、「自身の貢献実感」や「キャリア形成」、「自分の市場価値」についても非常に深く考える人が多いように感じます。こうした価値観の変化もあってか、以前は2%弱と非常に低い水準で推移していた入社3年以内の離職率が、ここ最近は上昇傾向にあります。それでも一般的な離職率に比べればまだまだ低いですし、離職が悪というわけではないですが、私たちとしてはこうした変化にいち早く手を打つべきであると考えていました。

検討プロセス・実行施策

日常的なコミュニケーションでは拾えない情報をサーベイで取得する

坂本様志鶴様

坂本:新入社員の入社後のフォローには、これまでも取り組んできました。入社3年目の終盤にアンケートを行い「仕事のやりがい」や「上司との関係性」などを調査しています。そのアンケートの回答をもとに、所属する社内カンパニー・事業部の人事と面談するという取り組みです。ただし、3年目の終わりのみに実施するアンケートであるため、回答に至るまでのプロセスを把握するのは難しく、3年目だけではなく1年目、2年目などもっと高頻度でやらなくていいのかという疑問もありました。

課題はありつつも、入社3年目向けのアンケートには有用な情報が含まれています。自由記述のコメントから、やりがいを感じている社員とそうでない社員、それぞれ頻出ワードがみつかりました。「仕事を任されている」「権限がある」というのは、やりがいを感じている社員から出てくる言葉です。一方で、やりがいを感じていない社員は「まだ仕事を任せてもらえていない」「権限がない」など、現状を否定的に捉えがちだということが見えてきました。

また、3年目時点で「仕事のやりがい」を感じられているかどうかは、「配属が希望通りだったか」という項目よりも、「上司の働きかけ」に関する項目の方が、影響が大きいことも分かりました。もちろん、配属は本人の希望を踏まえて真剣に考えて決めるべきであり、当社では新卒でも一部事業別や職種別のコースを設けたり、本人への希望聴取も複数回行ったりなどミスマッチのないように努めています。その一方で、仮に希望通りの配属だったとしても、上司との関わりによってはやりがいを感じられないし、逆にもともとの希望とは違う配属だったとしても、上司による動機付けや本人のWILLに関する対話がきちんと行われていれば、大きなやりがいを感じることもあると分かりました。こういったことは、定量的なアンケートだからこそ正確に得られる情報だと思っています。

志鶴:より高頻度で新入社員のコンディションを把握するために、短期間で状況把握を繰り返すパルスサーベイの導入を検討しました。当社では、以前から中途採用社員の立ち上がり(オンボーディング)においては、サーベイを活用してきましたので、その効果には強い期待がありました。月1回などのペースで定点観測すると、急激なモチベーション低下などの異変をキャッチできることもあります。新人・若手向けにもこういったサーベイを活用すれば、3年目のアンケートよりも早い時期に、心の揺らぎをキャッチし現場でフォローできるのではないかと考えました。

今回の施策で、上司に対して部下の本音と価値観をフィードバックするサーベイ・INSIDESを選択したのは、より具体的なアクションにつなげるための機能が充実していたからです。ただ可視化して数値を出力するのではなく、その内容を自動で分析して、適切な行動を提案するレポートが出力されます。先のアンケート分析からも、上司によるコミュニケーションを支援することは、新入社員の働きがいを高めるために非常に重要であるため、INSIDESをパルスサーベイとして活用することで高い効果を発揮するのではないかと期待できました。

サーベイの運用は検証の意味も兼ねて、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回など、社内カンパニーごとに頻度を変えて実施することにしました。対象は入社1年目の850名。その運用のなかで、「サーベイの頻度はどのくらいが適切なのか」「どうしたら現場の上司をうまく巻き込めるのか」、そして「現場の上司からのフォローが改善することで、メンバーのコンディションはどう改善するのか」という3つの観点から検証しました。上司や本人の行動変容などを踏まえ、サーベイを活用したフォローをしています。

成果・今後の取り組み

離職率の劇的な低下に施策が寄与し、対象者850名中退職者は2名

坂本:サーベイを実施するかどうかは10に分かれる社内カンパニーや技術・スタッフ部門、それぞれの判断に委ねていましたが、結果としてはすべてのカンパニー・部門が実施を希望しました。現場でのマネジメントに少なからず影響することなので、私たちとしては、対象者本人・上司・人事・メンターに対して丁寧に説明する必要があると思い、合計21回、延べ2000名弱に対して説明会を実施したことも良かったのだと思います。新型コロナウイルス感染防止の観点から、直接お会いしての説明はできなかったものの、オンラインの特徴であるロケーションフリーを生かして「若者の価値観の変化」や「サーベイの実施目的」、そして「どのように新入社員/上司と関わってほしいか」をきっちりとお伝えしました。リモートワークによって、マネジメントにおける悩みが増えていたことも相まって、現場からの高い期待を受けながら施策をスタートすることができました。

これはサーベイに限ったことではありませんが、現場を巻き込む施策を進めるうえでは、何よりも想い・熱意が大事であると考えています。現状に対する問題意識や、強い想いがあるからこそ、効果的な施策を実現させられるのではないかと感じています。

志鶴:サーベイの実施後、新人の上司やメンターたちからは、「元気だと思っていた部下の異変に気づくことができて大変助かった」などという声が上がりました。対面コミュニケーションが減っていることもあり、サーベイの結果が重宝されています。コミュニケーションがなかなか取りづらいなかで、悩みを抱えていた若手の存在も浮き彫りになりました。

2020年の施策の成果として顕著だったのは離職者の大幅な低下です。サーベイを実施した850名中、1年目の離職者はわずか2名でした。さまざまな要因が重なっているとは思いますが、今回の施策も大きな要因の1つと考えています。

坂本:サーベイなどによる状態の「見える化」と「行動変容」は本人と上司双方のアクションが不可欠です。本部の人事が直接すべての新入社員をフォローすることは難しいですが、新入社員と直接関わる現場の上司へのマネジメント支援はできると考えています。むしろ、こういった取り組みこそが人事が担うべき役割だと考えています。

これまでの人事は、業務を抱えすぎていたのではないかと感じています。本来、評価や育成は現場と本人をよく知る上司が担うことが理想と考えています。サーベイにより若手の心の状態の「見える化」が進みますし、それにより、今まで人事の経験や勘に頼っていた社員の状態把握や実施する施策の精度も上がります。定量的な情報を集め、それを整理することによって、人事の側面からロジカルに経営の意思決定をサポートするのが「戦略人事」。まさに今、「人事に変革を起こせるのではないか」という機運が高まっているところです。当社における人事の役割を再定義するところから着手し、これまで以上に経営者の右腕となる人事を目指したいと考えています。

企業紹介

パナソニック株式会社

総合エレクトロニクスメーカーとして、関連する事業分野について国内外のグループ各社との緊密な連携のもとに、創業以来の「家電のDNA」を継承しながら、生活の基本である「家」、それが集まった「街」、それらをつなぐ「移動」、すべてを支える「部品や素材」などさまざまな事業領域で、くらしや世界を革新する製品や技術、サービスを提供する。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。