新入社員の状態をINSIDESで「見える化」し、育成担当同士の連携を促進
「個に寄り添う育成」を会社の文化にする
背景・課題
当社はIP(キャラクターなどの知的財産)を軸に、モバイル、PCなどで楽しめるコンテンツを提供する「ネットワークコンテンツ事業」、さまざまな家庭用ゲーム機の特性に合わせて、バラエティに富んだタイトルを提供する「家庭用ゲーム事業」、新たなエンターテインメントの創出により、ライフスタイルを豊かにする「ライフエンターテインメント事業」を柱としています。
2021年には、最先端技術を結集したXR情報発信拠点「MIRAIKEN studio(未来研スタジオ)」という自社配信スタジオを開設。ゲームだけではお届けできなかったIPとの出会いや体験機会を提供しています。そのほか、少女たちの部活動「電音部」などを題材としたサウンドエンターテインメント事業や、スポーツエンターテインメント事業にまで領域を展開。従来の枠組みにとらわれない新しいエンターテインメントを広めています。
新入社員の希望やビジョンを踏まえ、「個に寄り添う育成」に取り組む
ゲーム事業を主軸に置きながら、幅広い領域に事業を拡大していくなか、「強み」を持った人材の獲得が重要性を増してきました。総合職であっても学生それぞれの「強み」を把握したうえで適した職務へ配置を行うことで、今後の事業拡大を推し進めていこうという考えのもと「タイプ別総合採用」をスタートしました。
一人ひとりの「強み」を引き出す「個に寄り添う育成」というコンセプトのもと、本人の希望やビジョン、挑戦したいことをキャッチアップして、それらを会社の意向とすり合わせて配属を決定しています。当社の「採用育成チーム」は、現在は2チームに分かれ隔年で担当することで、採用から入社して1年目が終わるまでの育成を一気通貫で担当します。例えば、2021年度入社を担当するチームは、採用活動を終えた後そのまま内定者フォロー、配属先検討、新入社員研修を担当します。2022年度入社の採用はもう1つのチームが担う形になります。採用と育成を一気通貫で担当することで、育成イメージや情報の共有に加え、採用までに培ってきた関係性のロスをなくすことが期待できます。一人ひとりに寄り添った採用・育成を実現する取り組みである一方で、見直していかなければならない点もあります。例えば、最近は採用期間が長期化しているなかで、採用と育成の繁忙期が重なってしまう点などです。コーポレート部門の業務は定型化しがちではありますが、前例にとらわれず常に課題に向き合いながら改善を続けていけるように心がけています。
検討プロセス・実行施策
新入社員育成のスキル面はインストラクター、士気はモチベーターがサポート
この数年は、毎年約50名の新入社員が入社しています。新入社員は、配属される部署や職種によって業務内容が異なり、全体研修に加えて、OJTによる教育を手厚く行うことも重要です。当社では「インストラクター」と呼ばれる社員が、新入社員の配属先での教育を担当してきました。高い専門スキルを持った社員により、新入社員は業務に必要な能力を実践的に身に付けていきます。このインストラクター制度をより良いものにしていくための話し合いのなかで、インストラクターの育成負荷の大きさが課題に挙がりました。それまではインストラクターがスキルに加えマインドの状態も把握しながら育成するという形になっていました。そこで、マインドのなかでも特にモチベーションケアについては、年次が近い社員に任せることで、育成体制の強化を図ると共に、新入社員にとっては身近な先輩が加わった2名体制になることで、見本となる先輩とのコミュニケーション機会を増やすことにもつながりました。
新入社員のケアをより手厚くし、さらにインストラクターの負担を軽減させる目的で、2020年度より心理面でのケアを担当するモチベーターという役割を新たにつくることに。インストラクターが、自発的にモチベーターに任せたいサポート内容を提案してくれたこともあり、新入社員が安心して成長するための環境をつくることができました。新型コロナウイルス感染症の影響で、オンラインでの育成が中心だったために、直接顔が見えづらいなかでも、新入社員とインストラクター、そしてモチベーターの3者間でのコミュニケーションが促進されて、一体感が生まれています。
INSIDESの結果をもとに、育成担当者らが新入社員の成長のために前向きに議論
そのようななか、INSIDESを導入したのは、新入社員の心理状態を「見える化」することで、より理解を深め、育成に関わるメンバーたちと新入社員本人が共通認識・共通言語を持って対話するためです。新入社員たちが自分の殻を破るためには、自分の状態を客観的に見ることも大事だと思います。また、オンライン環境下では、インストラクターとモチベーターが新入社員の状態を100%把握することも難しいでしょう。オンライン中心のコミュニケーションでカバーできない部分を、サーベイで補うことができていると感じています。
新入社員の教育やケアのあり方も、属人的にならざるを得ない部分があるので、サーベイによって見える化し、育成方針をすり合わせる機会にもなっています。インストラクターはそれぞれ想いを持って育成にあたっていますが、熱心な育成に対して「もっと頑張らなくては」とプレッシャーに感じる新入社員もいれば、「自分はもっとやれるので現状ではもの足りない」と感じる新入社員もいるものです。こうした、外からは見えづらい新入社員の感情の動きを定量的に把握できるのがINSIDESのメリットだと感じています。
成果・今後の取り組み
新入社員が成長の歩みを止めないように、「充実」のその先を目指す
INSIDESの結果をもとに、育成担当者たちは新入社員を5段階で最高の「充実」のレベルに上げるにはどうしたらいいか話し合っています。意外と難しいのがINSIDESの結果が良い場合のサポートです。「充実」の状態にいる新入社員を、さらに引き上げていくためにはどのようなフォローが望ましいのかを検討するために、SPIの結果も組み合わせて活用しています。例えば、「コンディションは良いし余裕もありそうだから、志向にもマッチしている新規性の高いチャレンジングな業務を一つ任せてみようか」など、新入社員の傾向をつかんだうえで、育成に関わる全員で一人ひとりに寄り添うフォローをしています。
また、人事側としては、苦しんでいる社員がいるとしたら、見つけてすぐにフォローをしたいのですが、本人が自分からSOSを発信することは難しいものです。そんなときも、INSIDESの結果があれば、すぐに話を聞きに行くなどフォローに入ることができるため助かります。
育成に関わる社員の熱意が全社に波及し、「個に寄り添う育成」が加速
インストラクター同士、モチベーター同士のヨコの連携も広がってきました。例えば、モチベーターたちが、オンラインゲーム大会を企画して、新入社員たちと親睦を図ったこともあります。「後輩を自分たちで育てるんだ」という意識の高まりを感じました。また、モチベーターという役割があるからこそ、2年目、3年目の社員も「自分は後輩に何を与えられるのか」という視点を持つきっかけになっていると思います。若手のうちに育成の意識づけができ、それが全体の底上げにもつながることを期待しています。
最近では、自然発生的にインストラクターやモチベーターが、「何か協力できることはないか」と話し合いをしています。毎日のようにインストラクターとモチベーターと新入社員の3人でコミュニケーションをとっているところもあり、「新入社員が安心して成長できる居場所をつくろう」という意気込みが伝わってきます。その際の共通言語の1つに、INSIDESやSPIの結果を活用してほしいと思っています。インストラクターとモチベーターを中心とする育成メンバーの熱意が全社に波及して、「全員で新入社員を育成しよう」という空気も醸成されつつあります。インストラクターやモチベーターの新入社員との関わり方を見て、より心理的安全性の高い環境をつくるためのサポートをしているマネジャーもおり、新入社員育成の輪の広がりを感じているところです。「個に寄り添う育成」というコンセプトのもと、会社全体で人を育てる文化を醸成していけたらと願っています。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューションプランナー 中田 樹里
「個に寄り添う育成」を実現していくうえで、人事/育成担当/新入社員が共通認識と共通言語を持っている状態を作り上げることが必要だと考え、人事の皆様と取り組んでまいりました。
そのなかでもポイントとなる取り組みは以下の3点です。
(1)定期的にINSIDESを新入社員に実施し、「今のコンディション」を人事/育成担当/新入社員が知る仕組みの構築
(2)新入社員の性格やモチベーションスイッチを人事/育成担当/新入社員が知る機会の提供
(3)ツールをもとに研修後に会話・フォローアップできるような仕組みの設計
結果、育成担当は自分の見立てとズレがないかを定期的に確認し、自身の育成に確かな手ごたえを得て、改善しながら取り組むことができるようになりました。新入社員も自身を客観的に知ることで「心のSOS」に気づくことができています。
また、人事も配属後見えづらくなった新入社員の様子が分かるため、育成担当・新入社員と共通認識を持って対話することが可能となりました。
そして、「個に寄り添う育成」を会社の文化にするために、積極的にヨコのつながりをつくり、育成の悩みを相談、育成ナレッジを還流できる仕組みをつくっています。配属時のフォローアップ研修、配属半年後の育成振り返り研修では、新入社員についての理解を深めるだけでなく、近い部署の方々と育成の悩みやナレッジを共有し合う機会を多く設けています。
より良いやり方はないか、毎年、採用~育成の領域において共に模索し考える機会をいただけることが非常に嬉しく、それらがどのように進化・変化を遂げるのか、今後の取り組みも楽しみにしています。
企業紹介
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
「長く深く遊べる良質なコンテンツ」と「多彩なエンターテインメント」で世界中のファンの皆さまの期待を超えるという基本方針のもと、IPを軸にネットワークコンテンツ、家庭用ゲーム、ライフエンターテインメントなどの分野において、幅広いターゲットに向けてさまざまな商品やサービスをワールドワイドで提供している。また、2022年4月から新中期ビジョン「Connect with Fans」を掲げ、IPを軸に世界中のファンの皆様とつながることを目指し、ファンとつながるための新しい仕組みの開発に着手する。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。