急速な事業成長の要となるマネジャーをインサイズで支援。
メンバーとマネジャー双方の状態を見える化し、1on1の効果を高める
背景・課題
高難度のチームマネジメントに挑む、若手マネジャーを支援したい
当社は、インターネット広告の仕入れ・販売から、広告配信技術、ソーシャルメディアマーケティングなどまで、デジタル広告ビジネスを統合的に展開しています。1996年に博報堂、旭通信社(現 ADKホールディングス)などの広告代理店の共同出資で設立されました。当時の社員数は4名。それから30年弱がたち、現在はグループ3000名規模の組織となっています。
これまでグループ再編や事業移管などを通じて、何百人と社員が増えるタイミングが幾度かありました。2022年も中途採用で300人、新卒採用で150人程度増加しています。そうした際は、マネジメントの数が不足する状況が発生しがちです。育成を強化しつつも、経験の浅いメンバーが抜擢されることもありました。
もちろん、小さなチームのリーダーなどの経験を経たうえでマネジャーになってもらうのですが、当社のスピード感ですと、本人からすれば「ある日突然、マネジャーになった」と感じることもあるでしょう。プレイヤーとして求められることと、マネジャーとして求められることには大きな差があるため、この突然の変化に戸惑う人も多い状況です。メンバーからしても、昨日まで同僚だった人間がマネジャーになるわけですから、慣れるまではマネジャーもメンバーもやりづらさを感じるでしょう。
加えて、デジタル広告という変化の激しい事業領域ならではの難しさもあります。次々と新しいメディアやツールが登場するため、常に学び続けなくてはならないし、場合によってはクライアントの方が詳しいこともあります。例えば、TikTokやChatGPTが一気に普及しましたが、こうした全世界的な急激な変化について、私たちとお客様で情報を得られるタイミングはそう大きく変わらず、知識や経験の差が生まれづらくなっています。
この環境下で、マネジャーが1人で課題を解決するのは難しいと考えています。デジタル広告の業界では、「まだ誰も正解を知らない」ということも多い。広告業に欠かせない「生活者目線」も、広告のプロであるマネジャーよりも経験が浅い新卒社員の方が有しているケースも多いのです。つまり、マネジャーが上、メンバーが下という関係性ではなく、「マネジャーとメンバーが一丸となって、課題解決に向けて知恵を振り絞る」というスタンスが求められているのです。
検討プロセス・実行施策
INSIDESを活用し、若手マネジャーの1on1とマネジメント研修の成果を高める
このように高難度化するマネジメントの課題を解決する一環で、1on1制度を導入しています。これを当社ではマネジャーとメンバーがきっちりと対話を行ってほしいという意図で、「Dialog(ダイアログ)」と呼んでいます。理想を言えば、マネジャーとメンバーが対話を行うことは特に意識せずとも、自然と行えるべきではあります。一方で、現在の難しいマネジメント環境のなかでは自然と良い対話を行うことはなかなか難しい。中長期のキャリアなど相手に合わせたさまざまな話題について話すことができるとよいですが、忙しいなかだとどうしても今の目の前の仕事についての話題がほとんどになってしまいます。そのため、制度として1on1を導入して目の前の仕事以外の話題について話すきっかけをつくっています。
「INSIDES」を導入したのは、適切なテーマ選びの助けになると思ったためです。多くのマネジャーたちはマネジメントとプレイングの両方をしていて非常に忙しく、メンバーと対話しようにも目の前の仕事以外の話題になかなかならないことも多いでしょう。一方で、長期的な視点に立てば1on1では将来のキャリアやプライベートの話題にも触れてほしいし、ムーンショット目標(中長期的なありたい姿のことで、実現可能性によって制約を置きすぎず、仮に達成したときにインパクトがある目標)を掲げることも推奨しています。INSIDESを導入することで、メンバーの状況や性格が、とてもシンプルに分かりやすく可視化されるので、忙しいマネジャーでも「次はこういう話をしてみよう」と選択しやすくなると考えました。
加えて、メンバー側にも、マネジャーがどんな性格なのか提示される点が良かったです。前述のとおり、マネジャーとメンバーがお互いに知恵を出し合うということが求められる環境です。もしマネジャーが正解をもっている環境であれば、極論ではメンバーがマネジャーの言うことに従うだけでも仕事はうまくいきます。しかし、実際にはそうではなくお互いに意見を出し合う必要があるのでメンバーもマネジャーの性格を理解することは重要だと思うのです。
INSIDESの全社導入に先立って、トライアルとして一番忙しいチームでの導入を試みました。課題感が色濃く出ているところから試して、納得のいく結果が出れば、全社導入しやすくなると考えたからです。これに続いて、新任マネジャーのチームにもテスト的に導入しています。新任マネジャーには20代の若手もおり、よりサポートが必要だからです。チームの状態が良くないようなら、人事部門が新任マネジャーをサポートすることもできます。
成果・今後の取り組み
チームの状態を定点観測し、「チームが変化したきっかけ」を再現する
トライアルの結果は非常に良好であり、2023年の4月から全社導入に移行しました。特にマネジャーからの前向きな声は後押しになりました。INSIDESの結果から、普段のコミュニケーションでは見えていなかったメンバーの一面を知ることができた、という声が多かったです。
結果として、ピープルマネジメントやコーチングの知識も活用されやすくなりました。マネジャーには、マネジメントのスキルを身につけてもらうために、ピープルマネジメントやコーチングの研修を受けてもらっていますが、スキルは使ってはじめて意味があります。料理に例えるならば、スキル研修をするだけなら、包丁や鍋といった「道具」を渡しているだけの状態。そこにサーベイ結果という具体的な状況、つまり「材料」が加わることで「今このタイミングでは、この道具を使おう」と結びつき、結果的に「美味しい料理」ができる。つまり、INSIDESを導入することによって、マネジャーが研修の学びを、実際のチームマネジメントにつなげる助けになったのです。
また、チームの状態を見るうえで重要なことは、点ではなく、経過を見ることです。点で見て一喜一憂したり、「この人はこういう人だ」というレッテルを貼ったりするのはやめるように伝えています。個人やチームの状態がどのように変化しているのか、その経過を見たとき、右肩下がりが続いてあまり状態が良くないところから右肩上がりに変化した分岐点には、何かのきっかけがあったはずです。その変化のきっかけは、メンバーへの声掛けなのか、1on1での対話内容が良かったのか、はたまたプライベートの要因なのか、それぞれにあると思います。その「分岐点で何があったのか」を把握することが大事であり、再現性を高めていくことがマネジャーの成長やチーム状態を良くすることにつながると考えています。
さらに上位レイヤーにいる部長クラスは、各チームの状態を俯瞰して見ています。基本的に部長クラスは、チームマネジメントに細かく口出しすることはありません。各マネジャーを信頼してチームを任せているため、アラートが上がったときのみサポートに入ります。しかしながら、チーム状態が良くないことが外からは分からないこともあります。そのため、INSIDESの結果を通じて異変をキャッチアップすることが重要になるのです。
私たちの業界は変化の大きい状態にありますが、1人だけで変化に立ち向かっていくことは大変です。メンバーとマネジャー、さらにその上に立つ人たちが一緒に進化することで、少しずつ変化に対応できるようになるのではないかと考えています。組織は急には変わらないので、その変化にも気づきにくいと思います。その変化に気づかせてくれるのがINSIDESなのです。チームと組織の状態を見える化してフィードバックをすることによって、より良い組織変容のきっかけづくりをしていきたいと考えています。
企業紹介
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
インターネット広告を主要な領域として設立された総合デジタルマーケティング企業。社会の変化に合わせ、広告・マーケティングに加えて、データビジネスやソリューション開発も行っている。クライアントやメディアに寄り添い、ビジネスの成長に伴走し、情報が溢れている現代において生活者に本当に必要とされる情報を届ける仕組みをつくる。日々変化する企業・生活者・社会に対し、広告とテクノロジーを活用したより良い未来を提示。「広告」と「テクノロジー」を軸に、デジタルマーケティングの最前線を走り続ける。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。